ファンタム互換電流伝送(CT)マイクロフォン

CT MICROPHONE
ファンタム互換電流伝送(CT)マイクブロック図

これが今回開発した、ファンタム互換電流伝送(CT)マイクロフォンの概要です。
2013年、金田氏が出した電流伝送のマイクの特許が成立しました。伝送ラインに電流信号を送ります。そうすることで、伝送ライン途中の電圧依存で インピーダンスが変化する影響を受けにくくなります。伝送途中にはかけた電圧によってインピーダンスが変化する箇所があるようです。それによる歪みが微少 電圧信号の伝送では発生しているものと推測されます。このような現象は、主に接点(コネクタ)で生じています。経験上、電線内部でもそのような現象が起き ているのでは無いか、というくらい電流伝送では音が変化します。この効果は、DCマイクの高い鮮度が出る由縁ととても近い現象と思われます。
これはすばらしい、と思いましたが、またもや、このままでは一般化しない、ファンタムと互換性も無い。ECM使用で、いろいろ限界もあります。
そこで、旧来のマイクカプセルを用い、何とかファンタムと互換性持たせた形で実現できないか?と試行錯誤、シミュレーションの日々数ヶ月、やっとプロトタ イプがまとまりまして、このブロック図のような電流伝送のマイクの試作が出来ました(2014初旬)。幸いにも、私は本業で、高精度回路やトランスイン ピーダンス・アンプ、電流伝送、チャージ・センシティブ・アンプ等について散々やってきていて、その知識が生きました。

肝心の音質は、主観になりますが、旧来のDCマイクのような華々しい、キレのある音を維持したまま、ふくよかな音質が加わった感じがします。
<なお、概算ですが、DCマイクの開放端感度は-26.4dBV(@94dB SPL)です。
 開放端といっても、出力インピーダンスが数Ω以下なので600Ω負荷でもほとんどレベル低下は無いと思われます。>

金田式電流伝送マイクとの違い

もう少し詳細なブロック図が右図です。
2016年2月号の「無線と実験」誌に、金田明彦氏が電流伝送マイクロフォンシステムを発表し、とても私が2013年から取り組んでいる回路と似ていたので、少し説明致します。
マイク本体とプリ部分(金田氏の記事はA/Dコンバータ含むまで)の分かれますが、マイク本体はとてもよく似たものでした。
上図「SuperLowNoise Differential Amp」はJFETの差動対で、基本的に金田氏の回路と私の回路は同じです。
金田氏の回路はコンデンサマイク「MIC」のマイナス側端子がバイアス電位ですが、私の回路ではGNDです。恐らく金田氏の回路ではその方がノイズが少なかったのだと思いますが、私の回路ではGNDで十分にノイズが少ないです。
私の回路では「Transconductance Booster & Adjuster」があります。この回路で、マイク部分のゲイン(トランスコンダクタンス)を増大、かつ、ゲインを調整をして、マイク単体毎のゲインをそろえています。
こうすることでファンタムで用いた場合、使えるわずかな電源電流を有効に使えるようにもなります。ゲイン調整が無いと、ゲインをJFETの選別に頼ることになって、量産する場合には工数がとても増えてしまいます。
また私の回路には「HV DC/DC」回路で成極電圧を作っていますので、電源電圧に60V以上掛ける必要がありません。

その他、あちこち細かな点は違っていますが、JFETの差動対のバランス信号がでるドレインの電流をそのまま長距離伝送してプリにつなげる、ということは全く私と金田氏と同じです。

基本的には同じ回路、と言って良いでしょう。音も似ているのでは無いかと思います。
ただ、私の回路はファンタム互換でつくりましたので、48Vファンタム電源で簡単なアダプタを付けるだけで音が出てしまいますので、利便性はとても良いと思います。

 
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2016/8/14更新